サントリー株式会社第3回 動脈硬化予防啓発イベント

食で血管を若々しく

バランスの良い食事で健やか長寿!

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実施日時
2008年 7月17日(木) 16:00~18:15
場所
サントリーワールド ヘッド クォーターズ
大会議室(東京 台場)
(〒135-8631 東京都港区台場2-3-3)
参加
サントリー株式会社 社員200名
講師
松田 文子(宇都宮中央病院糖尿病センター所長)
渡辺 満利子(昭和女子大学大学院生活機構研究科教授)
山科 章(東京医科大学教授)
司会
久田 直子(NHKきょうの健康キャスター)

実施概要

当日は首都圏の事業所勤務者を中心に、200名ほどの社員が参加。動脈硬化予防研究基金運営委員長開原成允様のご挨拶、サントリー取締役人事部長栗原信裕様のご挨拶のあと、司会の久田直子アナウンサーによる導入説明、糖尿病セルフチェックでイベントはスタート。松田先生による動脈硬化と糖尿病の解説、食生活チェックシートと渡辺先生による動脈硬化予防の「食」についての解説、簡単レシピの紹介、そして山科先生による生活改善メニューの結果評価と動脈硬化予防についての解説があり、参加者は熱心に視聴した。そして3人の講師による、Q & A(質疑応答)を行い、最後に動脈硬化予防啓発センター井形昭弘運営委員長のご挨拶で終了した。

実施した啓発イベントの内容

(1) 会場参加者全員で糖尿病セルフチェック
松田先生の講演に先立ち、久田アナウンサーより、配布パンフレット左上のチェックシートを用いて全員が自分の糖尿病危険度を調べた。(※資料:パンフレット)

チェックシート

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(2)‘予備群'から進行中 動脈硬化と糖尿病
松田 文子 先生(宇都宮中央病院糖尿病センター所長)

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1. 動脈硬化を加速させる糖尿病
糖尿病は動脈硬化発症の主な危険因子
糖尿病は動脈硬化を加速させる
狭心症患者の78%が糖代謝異常

2. 糖尿病を知る
糖尿病とはどのような病気か
糖尿病の合併症(細い血管):神経障害、網膜症、腎症
糖尿病の合併症(太い血管・動脈硬化):心筋梗塞や脳梗塞など引き起こされる
糖尿病(高血糖)が動脈硬化を起こすしくみの解説
チェックシートによる糖尿病のリスクチェック
糖尿病の判定基準
「空腹時血糖」と「ブドウ糖負荷2時間後の血糖値」による判定方法→隠れ糖尿病の可能性

3. 「予備群」から動脈硬化は進行する
予備群だからといって安心してはいられない。ただしライフスタイル(食事と運動)を変えることで効果があることのエビデンスが現在集まってきている。

4. 今からでも遅くない!進行は阻止できる
* 糖尿病の危険因子・原因:インスリンの作用不足、インスリンが出ていても充分活用できない状況
糖質やカロリーのとりすぎ:糖質はインスリンを大量に必要とする
肥満:インスリンの作用を邪魔する物質が分泌される
日本人であること:日本人は元々インスリンを補給する力が弱い人種
* 糖尿病の予防においては、食事と運動をすることによって確実に予防できる!

(3)会場参加者全員で自己チェック
「食生活チェックシート」を用いて全員が自分の食生活について調べた。(※資料:食生活チェックシート)

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(4)動脈硬化予防の要、現代人の食から日本の食へ
渡辺 満利子 先生 (昭和女子大学大学院教授)

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* チェックシートの結果診断

1. 日本の「食」の現状
生活習慣病急増の要因は「食べ方」にある?
糖尿病やメタボが激増している一方で、国民全体の摂取エネルギーは30年前より下がっている!これは終戦後の食糧難時代を下回る数値。
→ 問題は朝食とは名ばかりの朝食、夜9時以降のまとめ食い、子どもにまで及ぶ食習慣といった「食べ方」にあるのではと考えた。

FFQW(食物摂取頻度調査)の結果、糖尿病予備群(男性)の例でみた食品別エネルギー充足率は肉類、油脂類、アルコール摂取が極端に多く、野菜類が少ない
糖尿病予備群の方たちに対し、改善のための以下の内容の「新栄養教育」を行った結果、ブドウ糖負荷2時間後の血糖値が15.3%改善、1日の摂取カロリーも6%改善
・適正エネルギーの摂取
・朝、昼、夕の食事を1:1:1の割合で
・朝ご飯はご飯、みそ汁、野菜、おかず和食の推奨
・夕食にたくさん食べることをやめさせた

2. カギは「朝ご飯」
朝ご飯を充実させて、夕ご飯を控えめにし、3食を均等にとったことで、改善が見られたが、中でも朝ご飯の充実が大切。
時間遺伝子の仕組み
人は朝日を見ることで体が目覚める。それに加え、朝食を食べることで全身の末梢神経にサインが行くことがわかった。これによって朝食のエネルギーがすべての臓器をめざめさせ、余すことなく消費される。学ぶ(知)、理性や感情(情)、本能(意)これも朝食によって神経細胞に働きかけ正常にコントロールされる。

その対極にあるのが、夜遅い食事。朝の食欲低下にも繋がる。

3. 表裏一体「男性のメタボ」と「女性のやせ」
現在、40~74歳男性の半数がメタボ。その反面、若い女性は「やせ」が増えているが、妊娠中の低栄養にさらされた胎児は飢餓状態となり、少ない栄養をしっかり取り込もうとする。栄養を取り込みやすくて消費しにくい体となるため、成人になると肥満になる確率が高く、動脈硬化増加につながるという問題がある。

4. 日本人が食べるべきもの
ご飯、魚、野菜、フルーツ、大豆。
大事なのは食事のリズム。「朝食の充実」と「夕・夜食のとりすぎ改善」、「油脂類を控え、適量のアルコールに野菜、果物を充分摂取する」。朝食で生活習慣病を一掃しましょう!

(5)動脈硬化をよせつけない簡単レシピの紹介

1. ミネストローネ(具だくさんスープ)

2. 手軽にダイズと野菜のサラダ

ポイントは野菜たっぷりで、大豆が入っていること。動脈硬化の予防には、大豆のレシチンが効果的。レシチンは細胞膜を形成する成分で、肝臓や脳神経、血液などの代謝に関与し、脂質代謝を活発にする働きがあります。

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(6)生活改善メニュー参加者の結果報告
「運動」、1日1万歩。「食事」、たくさんの野菜に、肉より魚。そして「禁煙」。という生活改善メニューに挑戦してくださった32名の方が半年間にわたって挑戦していただいた結果

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体重:半年間で、平均3.2㎏の減量に成功しました。
歩行数:目標、1日10,000歩に対し、1日平均10,577歩
32名中19名は、毎日10,000歩以上歩いて、平均4.4㎏減量しました。一方、10,000歩以下の13名は、平均1.3㎏の減量にとどまったということです。

今年の健康診断を受けた32名中29名の平均値です。
・中性脂肪… 134.2 → 87.9
・収縮期血圧… 118.3 → 116.1
・LDLコレステロール…120.5 → 116.8
・γGTP… 48.6 → 38.1
・血 糖 値… 94.9 → 95.4
・腹  囲… 88.0 → 82.2(25名)
・FMD内皮機能…開始3ヵ月後 5.02 → 6.35(23名)
           開始6ヵ月後 4.64 → 7.39(15名)

実際にこのメニューに挑戦したMさんの結果
体重は9.6Kg減、その他健康データも大幅改善しました。

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(7)生活改善メニュー参加者の結果評価
山科 章 先生(東京医科大学教授)

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半年間で3.2キロの減量は、体重の5% 減という目標値に通りで非常に理想的
中性脂肪の低下は食生活の改善によるもの
LDLは元々の数値がそれほど高い値ではないので目立たないが、低下は評価したい。
血管内皮は、血管の緊張や血管構造の調節する機能を持つ。血流依存性血管拡張反応 (FMD) 検査は内皮の調整機能を測定する。FMDの数値も生活習慣の改善で内皮機能がかなり改善しているといえる。
血圧の値に注目してほしい。たった2しか下がっていないじゃないかと思うかもしれないが、日本国民全体の血圧が1mmHg低下すると、脳卒中になる人は毎年1万人減少する。
ハイリスクアプローチと集団アプローチ
血圧が高ければ高い人ほど治療をすれば改善される。だが、高血圧の人だけを治療しても脳卒中は撲滅できない。問題はほどほどに血圧が高いにもかかわらず、病院に来ない人。こうした人たちは、今日のこのような催しによる「集団アプローチ」によって、国民全体が実施することが大事。
睡眠時無呼吸症候群と動脈硬化

もうひとつ知っておいてほしい病気が睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群のチェック項目。以下で3つ以上該当すると可能性がある。
・昼間いつも眠い
・いくら寝ても眠い
・朝の目覚めがすっきりしない
・朝起きると頭が痛い
・居眠りをよくする
・記憶力、集中力が落ちてきた
・夜間、何度か目を覚ます
・夜間、何回もトイレに行く
・いびきがうるさいと言われる
・精神的に不安定になる

この病気は簡単に発見できるので、思い当たる節があれば病院で見てもらってほしい。

(8)質疑応答
以下の質問に対して、講師による詳細な解説が行われた。

(質問1)血糖値が高く糖尿病の可能性があるが、激しい運動は避けた方がよいか。また、飲酒や喫煙と関係がありますか?
(松田先生)
簡単に申し上げると、運動は是非やっていただきたい。激しい運動でなくてもゆっくりしたものでも良い。この「メタボリックシンドローム」というパンフレットの10pにある運動のところに出ているが、強度の強い激しい運動と生活活動を適度に組み合わせて、1週間に23エクササイズを自分の体力に応じて行うことを健康日本21推進全国連絡協議会は勧めている。
喫煙は健康上非常に不利益につながるし、糖尿病にもよくない。飲酒については、適量の飲酒は糖尿病の発症を抑制するといわれている。

(質問2)残業でどうしても夜遅い食事になるが、どのような食事が良いか教えて欲しい。
(渡辺先生) 夜遅い食事はブドウ糖が多くなり、インスリンが分泌され、動脈硬化のリスクが高まる。それをなくすには夕方おにぎり2つ(300kcal)にヨーグルト(100kcal)、玉子1個(100kcal)などを食べると合わせて約500kcal取れる。帰宅後は野菜とか、あったかいスープとかを召し上がると良い。元気で長生き、そして良い仕事をしたいということでしたら、是非夕方に少し食事されることをお勧めします。

(質問3)どうしてもタバコをやめられません。タバコ1本に引き換えに実践できること、タバコ1本がチャラになるようなものはないでしょうか?
(山科先生)

タバコは百害あって一利なし。何もありません。最近は禁煙補助薬や禁煙外来に保険も利きますので、是非禁煙外来にもかかられても良いと思います。

・・・など、参加者と講師による活発な質疑応答が行われた。

(9)主催者からのメッセージ
動脈硬化予防啓発センター運営委員長 井形昭弘先生(名古屋学芸大学学長)

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本日は長い間あっと過ぎてしまいましたが、皆様の知識もずいぶん向上しましたし、昨年の11月から3回に渡って会社も盛り上がっていただき頼もしく思いました。特に、先ほどの半年間の成果は非常に大きかったと思います。やはりこういう情報を皆さんで共有して、職場とか自宅で話し合うという事が非常に大事だと思います。
私どもの仕事は、実は万博のときに動脈硬化予防研究基金から援助をいただいてWHOの動脈硬化にかかわる展示を行いました。2千万人の人が来て、そのうちの1割である2百万人の人が見てくださった。それで知識を深めていただいたが知識だけではだめで、今回こうして成果があがったことに私は非常に大きな感銘を受けました。
皆さんは非常に知識がずいぶん上がってきていると思います。皆さんが健康相談を受ける立場に立っていただきたい。
私は朝1時間散歩していますが、犬を連れているといいです。犬を飼う人は犬が運動しなければいけないということが徹底されている。店からも言われますし、犬が散歩に連れて行けと催促してくる。犬でさえできるのだから、人間だってできるはずです。そういう事を感じています。
それから、生活習慣が大事だということは、ご存知のように沖縄が長い間全国一の長寿を誇っていたのが、最近下がってきていて、これは終戦後アメリカナイズされた生活習慣によるものといわれています。これが日本の明日の姿ですね。長野県は今平均寿命が一番長いですが、医療費は全国最低の水準にあります。
これからの長寿社会において、やはり皆さんが努力する事によって、理想的な長寿社会が実現する。実際に病気にかかったときに、あぁ昔からこれをやっておけば良かったと思うのが世の常です。どうか本日の成果をそのまま引き継いで、サントリーが全国的に最優秀会社といわれるように努力を続けていただくことを心から希望いたします。
最後に、会社がこれだけ積極的にご協力いただいたこと、もちろん動脈硬化予防研究基金からご支援をいただきました。そしてNHKエデュケーショナルの皆様に御礼を申し上げて、最後のご挨拶に代えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

イベントへの反響など

参加者の声から
* 印象に残った話、感想等
血管機能を是非若返らせたい。女性
生活改善メニュー実践者の方が酒を飲み続けながらダイエットされてたので、自分もやってみようと思った。
レシピは早速実践します。ちょっと時間が長いかも。1時間~1時間半くらいならもう少し多く人が参加すると思います。
血管内皮機能の改善、睡眠時無呼吸
生活改善メニュー実践者の変身。やればできる!
実際、生活改善メニューをなさった方々の結果を見てびっくりした
朝食の重要性
改善の実例

 

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