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人は血管とともに老いる
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人の身体は100兆個もの細胞からなっています。その細胞全てに酸素や栄養を供給し、代わりに老廃物、二酸化炭素を回収しているのが血液です。
この血液を全ての細胞に送り届けるために、人の身体には総延長10万キロ、地球二周半にも及ぶ血管網が張り巡らされています。
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心臓から送り出された血液が通る動脈には、血流による圧力がかかります。動脈はこの圧力にしなやかに伸縮しながら、対応しています。
しかし動脈は加齢とともにしだいに弾力性を失って、硬くなり、内面には脂肪の隆起をみるようになります。それが動脈硬化です。そして動脈の内腔が血栓(血の塊)などで閉塞すると脳梗塞、心筋梗塞などを起こします。“人は血管とともに老い”ていくのです。
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上:動脈硬化が進んだ血管を開いたもの。下:正常な血管
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動脈の標本。
左は正常、右は動脈硬化のために内腔が狭くなっている
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血管について
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動脈硬化は全身の動脈に起こる
動脈硬化は、全身の動脈にひろく起こりますが、特に大動脈、冠動脈、頚動脈、大腿動脈に強く起こります。その結果、動脈瘤を作ったり動脈閉塞を起こします。
静脈硬化はあるか?
細胞に酸素や栄養を補給した血液は、二酸化炭素を回収して静脈を通って心臓に帰っていきますが、この静脈の壁は薄く、血圧は低いので、動脈のような硬化は起こりません。
血管の太さ
血管はもっとも太いところで直径25mm、細いところではわずか0.008mmにすぎません。
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下肢大動脈。動脈硬化を起こしているのがわかる(最新鋭の16列マルチスライスX線CT画像 ※1)
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心臓を養う血管が詰まる心筋梗塞
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心血管疾患の中で、近年増加を続けているのが心筋梗塞です。心臓は握りこぶし大の大きさに過ぎませんが、1分間におよそ70回、一時間に4200回、一日には10万回もの拍動をして、血液を送り出しているポンプです。
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この絶え間なく働き続けるポンプに、酸素と栄養を供給しているのが冠動脈(かんどうみゃく)です。冠動脈が動脈硬化を起こし、細くなったり、詰まったりすると、血液の供給が十分に行われなくなり、心臓の筋肉は壊死を起こします。これが心筋梗塞です。
心筋梗塞は激しい胸の痛みとともに突然襲ってきます。緊急に処置をしないと死に至ります。
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心臓の冠動脈。動脈硬化を起こしているのがわかる(最新鋭の16列マルチスライスX線CT画像 ※2)
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冠動脈造影という方法でとらえた冠動脈が詰まった様子。血流が途絶えているのが良くわかる
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脳の血管が詰まる脳梗塞
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脳動脈が関係した心血管疾患は脳卒中です。かつてわが国で多かった脳卒中は、脳の血管が破れて起こる脳出血でした。しかし近年脳出血は、栄養状態が改善され、高血圧の管理が実施されるようになったため、減ってきています。
代わりに増えてきているのが、脳動脈が詰まり血流が途絶えて起こる脳梗塞です。
脳出血にしても脳梗塞にしても、脳細胞が死んでしまう病気です。その起こった場所によってさまざまな意識障害や運動感覚、言語などの機能障害を起こします。また場合により死に至ることもあります。
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脳梗塞(X線CT画像)
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脳出血(X線CT画像)
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死亡原因のトップ─心血管疾患
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65歳以上のわが国の高齢者の死亡原因を見ると1位はがん、2位は心臓病、3位は脳卒中になっています。心臓病と脳卒中は動脈硬化を原因とする心血管疾患が主体です。したがって心血管疾患は、高齢者では全体の35%を占め、死因の1位に躍り出ることになるのです。
高齢化が進むわが国、心血管疾患の予防は私たちの健康にとって極めて大きな課題といわなければなりません。
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日本の高齢者
(65歳以上)の死因
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国際比較のための
WHOによる年齢修正データ
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※1 ※2 東芝メディカルシステムズ提供 |
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